原田よしひろ Harada Yoshihiro
韓国/日本 Korea/Japan
詩人 Poet
詩は無意識の表出だと思う。少なくとも私はそう思いながら、
詩を書いてきた。人間が存在する限り、
地球上のありとあらゆる場所に無意識は存在する。
培われてきたもの。それこそが最も無意識が無意識たる所以である。
なぜなら、人間は完全ではありえないからだ。
完全な存在には、知の蓄積も感情の連鎖も思考も経験も必要がない。
故に言葉も必要がない。
人間という未熟な個体同士が集まるから、思考を必要とする。
だが、言葉は全ての思考を表現しきれるわけではない。
詩は言葉が持つキャパシティーを超えた所に存在する。

アルバムの声に耳を澄ます
脳は君のことばかり組み立てる
言葉は悲しみの消しゴム
雨・滴 そして 瞳が濡れる
壊れたって楽しい昔
幼い手つきが絵を拡げる
波から湧く青い心
涼しい光に燃える朝
秋ちらり 道に枯れ草
バイオリンが泳ぐ雲
愚痴にも作法がある
思い出は四角くても良い
古時計は錆びない
歩き声にも色がある
ボールペンが刻む時間
空の足音はふわふわしてる
字は汚くても言葉は生きる
正しい言葉よりも生きてる言葉
知ってる言葉で恋に落ちた
言葉に翼が生えた キモチイイー
思いに偏る言葉を食べろ
芳しさに混ざった言葉
言葉を笑う言葉は嫌い
棘も心を溶かす言葉となる
言葉で舌を噛み切れ

神話 壱
昔が辿る
私への流れ
風は撫でて
鳴き声が猫になる
陽射しから誘われた
笑いのように言葉は拒まれ
今が混沌から放たれる
海辺は溶岩の岩ばかり
みかん畑へと続く坂
おいしそうに泣きながら顔をすぼめて
「ありがとね」と言った 母
神様は青い血となったから
私も今を生きている
ハン ハン ハン
恨(ハン)なのか限(ハン)なのか判らない
遠ざけられた過去は
ウサギ山の蛇
道は知っていた
柵を囲って生きている心が
研ぎ澄まされた
檻となっている事を
誰も知らない
海を越えた女神が
人生の設計図を支配したなんて
脳が頭皮を刺し
肌が血を裂く
シグナルは
無感情という感情に感動して
全ての感情を殺す
夕陽は時を刻みながら
何を生み出そうとしているのか
生きてきたんだ
生きてきたんだよ
生かしてくれなんて
頼んだ覚えはないよ
眼差しに聞け
心に聞け
閉ざされたものに聞け
神話はまだ生きている
神話 弐
(笑いに隠れた笑いが
私の笑い)
どうしてこの道なのか
花は空から伸びた手に向かって
口を開けている
私は守られていない
だが私は産み落とされた
体の奥に染み込んだ
遥かなる過去を思う
蛇神を背負った心を生きる
女として
顔に皺をいっぱい寄せて笑い
心と言葉を殺された宿命から
私は生を受けた
息を止めて生きろと沈黙した人々に
私は可憐な花を添えたい
けど
私には言葉が無い
私には感情を彩る熱い血が無い
青い血
そう
青い血
誰か!
私に流れる青い血を言葉にして!
誰か
私に流れる青い血を感情にして!
叫びたい
けど、私には叫ぶと言う言葉が無いのだから!
私は言った
「私は京子です」
私は口から音にして言った
「私は京子です」
でも、私には言葉が無い
息を止めて笑っていなければならない私が
息を伴う言葉を発することはありえない
私は京子です
私は京子です
神話 参
手紙を書こうと思います
手紙に包みたい言葉を
一つ
二つ
頭の表面に浮かべては
想いを添えて文字にします
すると
私の声が録音されて
音となって
あなたに届きそうな気がします
私があなたを尊敬するのは
あなたの業績へでもなく
あなたの勇気に対してでもなく
あなたが私たちの心を溶かす
本を書いたからです
時は重なれば化石になります
私たちの積み重ねた棘から滲み出る血も
化石となります
あるのは
(人が生きていたらしい)なんていう
曖昧な歴史だけです
だから「嬉しい」と私の歴史に重ねて
言葉を添えることができることが
本当に嬉しいことなのです
私はあなたを知りません
私たちに秘められた
閉ざされた歴史を
あなたに書いていただいて
本当にありがとうと言いたい
重ねられた傷は
もう自らを語る力さえありません
傷つくように仕向けられた神話によって
母も 私も
言葉を閉ざし
言葉では表現できない感情しか
持ち合わせていません
だから嬉しいのです
嬉しいと言える事が
嬉しいのです
嬉しいと書ける事が
嬉しいのです
そして
「ありがとう」と言えるのが
嬉しいのです
ありがとう
ありがとう
ありがとう
神話 四
何も知りません
呟きかけた息が
黙ってしまいます
言えない言葉が溢れて
濁った言葉を清めます
憎んではいません
笑い声は高らかに
風という生き方になります
命はいつでも
心になります
皆さん
私は人間だと言う事を
忘れてはいませんか?
白い
透き通ったもの
存在しているのに
私は存在さえしていません
どくんどくん
私は生きています
愛されていました
愛することも知っています
でも 心は使い捨て
心を持てば
私の心が私を消します
住み往く処の日差しから
私は私を覆います
何も知らなかったから
流した涙です
隅々に追いやっては
取り出す匂いも
手に掴むことはできません
声は笑いを拡げます
と
と
と それは今の話です
だって笑ったら逃げるんです
人と私の距離が
そして逃げれば逃げるほど
見えてしまうのです
壊れた幸せの向こうの
桃源郷が
声が小さく欠伸をします
見えない影が
私を見ます
そこには湧き水が
湧き出ていました
神話 五
何かを潜めて
笑顔 笑顔 笑顔
隠れた衣を脱いで
空に微笑をあげるよ
音色を波にのせて
おしゃれをしてよ
化粧をしてよ
女なんだから
蛇さん 仲良くしようね
蛇さん しあわせをありがとう
蛇さんのおかげで
僕を縛った世の中に
笑顔を向けられるよ
蛇さん
あなたも女だもんね
三百年も四百年も
女だもんね
世の中があなたを誤解しても
僕は蛇さんが
素敵な女性を言う事を知ってるよ
蛇さん
kissをしよう
蛇さん
ハグしよう
蛇さんが
形の無いものだとしても
僕は蛇さんと
抱擁したい
蛇さん
恋しよう
蛇さん
恋 してるよね
(そして蛇は恋を司る神となった)